樹について
「桃クリ3年、柿8年」といいますが、桃は本当に3年後に実がなりますか? また、りんごは、どのくらいで実をつけますか?
桃はことわざ通り3年で実を収穫することができます。3年目で20~30個の実を収穫できます。しかし、幼木のうちから無理に実をならせることは、長い目でみたときに樹の成長に決して好ましいことではありません。ですから、本格的な収穫樹齢を迎える6~7年目までは、樹の様子をみながら無理なく実をならせていくことが大切です。
リンゴは大体5~6年目から収穫することができます。これも桃と同じで樹が若いうちから無理して収穫すると良い樹に育ちませんから、若いうちは摘果と呼ばれる間引きの作業を注意しておこなって、成長に合わせてすこしづつ収穫の量をあげていきます。
桃やりんごの樹の寿命はどのくらい?
まずはリンゴの一生から説明しましょう。品種や育て方で少々異なりますが、標準的なリンゴの樹の一生は大きく分けて
- 苗木期(1- 2年)
- 幼木期(3~4年)
- 若木期(5~10年)
- 樹形完成期(11~15年)
- 成木期(16~30年)
- 老木期(30年以上)
に分かれます。
収穫は普通は若木期に入ってから開始しますので5年目から、そして老木期になると収量が低下しますので、大体30年目までが本格的な収穫の対象になります。ですから、果樹園のリンゴの一生はおおよそ30年と思えばよいのではないでしょうか。もっとも、土の手入れを充分におこなって、適切に樹を管理してやれば50年くらいはもたせることもできます。
桃クリ3年といいますが、桃は成長が早くてその代わり寿命も短いのが特徴といえます。 1)幼木期 は3年くらいで、3年目から収穫ができます。6~7年で本格的な収穫の対象となる成木になります。 2)成木期 は大体25年目までですが、経済的に採算の合う 3) 経済的樹齢 は15~20年くらいだと言われています。勿論、病気に罹ったりしなければ樹自体の寿命は50-60年ありますが、普通の果樹園では様子をみながら20~25年で新しい樹に更新します。
果樹の剪定について教えて下さい!
剪定の目的は色々ありますが、ひとこで言うと 「採光、通風、作業性」 の良い樹をつくるために不用な枝を取り除き樹形を整える作業です。そして、一番大切な採光とは、樹全体に陽があたるように、そして美味しい実が育ちやすいような樹や枝の形をつくることです。そのためには、大枝を少なくして 結果枝 (実のなる枝)を多く残して葉っぱが豊かに繁れるようにすること(専門的には 弱剪定 といいます)が基本となります。
採光 よくすることで樹の内部まで陽があたるようになり、樹全体にまんべんなく美味しい実をつけることができます。採光の良くない樹では上の陽のあたる部分にばかり実がなってしまったり、中のほうの枝が枯れてしまったりします。 通風 とは文字通り風通しの良い樹のことですが、これによって害虫防除のための薬剤散布のとき薬剤が樹のなかまで通るようにすることができます。 作業性 も大事です。摘果や収穫などの作業がやりやすい形の樹を育てることは手間を減らすという意味で、果樹園経営ではとても重要な要素です。
肥料はどのような物を与えているの?いつ与えるの?
肥料をどのようにあげるかは、果樹園の土質や果樹の品種や樹齢などによって異なります。有機質肥料と化成肥料をバランスよく混ぜながら適切な時期に樹の時々の必要に応じて施肥をおこないます。「果樹にあう土質ってどんなもの?」 への回答も参考にしてください。
モモを例にとると、一般的には秋肥、冬肥、春肥、夏肥と呼ばれ、季節季節に応じて施肥をおこなうのが普通です。 「赤い実の熟れる里」 では収穫後に 礼肥 として年間の肥料の3割をあげます。そして秋肥として残りの7割を与えます。要するに収穫後の施肥が重要なのですね。これは、「摘蕾、摘花、摘果について教えて下さい!」 の質問で回答したように、永年作物であるモモを毎年安定して収穫するためには、収穫後に樹に適当な 貯蔵養分 を貯えさせることがとても大切だからなのです。野菜栽培などと大きくことなるところですね。そして気候や樹齢などによって必要な場合には春肥を少々与えます。3月頃に与え5月頃に肥料の効果がピークになります。これは主に幼木の枝の成長を促すためのものです。成木では樹勢を回復させる目的があります。但し、幼木に春肥を与えすぎるとかえって樹が病弱になったりするので、あげ過ぎは禁物です。
台風や雪で折れた樹はどうなるの?
被害がひどい場合にはその樹は諦めて更新するしかありません。太い枝が折れたような場合には放っておくと、そこに病害虫が発生するもとにもなりますから、その枝は切り落とすことになります。
大切なことは台風や雪でも折れにくい形の樹を育てることですね。ここでも樹形を考えた 剪定 がとても重要なのです。とても専門的なことがらですから、詳しくはお答えしませんが一例をご紹介しましょう。例えば樹の基本的な形・張り具合を決める 主枝 や 亜主枝 を撰ぶときに、幹から鋭角に伸びているものは剪定で切り落とし、できるだけ鈍角に派生してきたものを残すようにします。鋭角に伸びてきたものは加重がかかったときに付け根から折れ易いからです。また老齢の樹ではどうしても枝が折れ易くもなりますから、そういったものには支柱を添えて支えてあげることもします。
果樹に虫はつかないのですか?
果樹の害虫に関する質問ですね。残念ながらモモやリンゴにはたくさんの害虫が寄生して大きな被害を与えます。果樹栽培は害虫との戦いといっても過言ではありません。だから果樹の栽培は無農薬という訳にはなかなかいかないのです。もちろん 「赤い実の熟れる里」 では、フェロモンを使ったり色々な工夫をして減農薬につとめています。また色々な研究機関で、天敵を使った生物農薬の研究も進められています。こういった天敵や生物農薬の研究が進んで、農薬を使わない果樹栽培ができるようになる日が来ることを祈っています。
色々な害虫が知られていますが、その一部を紹介してみましょう。 ナミハダニ や リンゴハダニ という ダニ類 は梅雨開けから盛夏にかけての赤い実の大敵です。ナミハダニは果樹で問題となるハダニ類のなかでもっとも有名なものです。寄生範囲が広く、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、オウトウ、スモモ等ほとんどの果樹に寄生するほか、野菜、花き、雑草などの草本植物にも寄生します。寄生の程度がひどくなると葉っぱの機能が低下し、果実が大きくなれなくなるばかりでなく、着色、糖度、あるいは花芽形成にも悪影響を及ぼします。
モモシンクイガ と ナシヒメシンクイ という シンクイムシ類 も果樹の大敵です。とくにモモシンクイガは幼虫が果実に進入して害を与えるので、果樹では最も重要な害虫として知られています。この虫がたちが悪いのは果実だけに寄生することです。産卵はほとんど萼顎部にされ、幼虫もこの近くから果実に侵入します。幼虫の侵入部位からははじめ果汁が出て、これが涙状に固まるといわれます。やがて幼虫は果肉部を不規則に食害し、最後には果芯部までを食害するにいたります。最終齢になると果面に穴を開けて外に脱出するのですが、この穴は針を刺したように直線的に果芯部に達するので、この虫にはハリトオシの別名があります。ナシヒシメシンクイはモモやリンゴのほかスモモ、アンズの果実などと、ほとんどの果樹の新梢に寄生することが知られています。
桃には モモアカアブラムシ 、 カワリコアブラムシ 、林檎には ユキヤナギアブラムシ 、 リンゴアブラムシ などの アブラムシ類 も大敵です。ひとつだけ詳しく説明してみますと、モモなどの核果類の樹に モモアカアブラムシ 寄生すると、葉っぱを不規則に激しく縮らせたり、ひどいときには葉が落ちてしまいます。そして葉の機能が低下し、新しい梢の伸びるのが妨げられてしまうのです。放っておくと、樹は衰弱して果実は大きくなることが出来ないばかりか、翌年の花芽の形成にも悪影響を与えます。モモなどでは最も問題となるアブラムシとして知られています。
まだまだ一杯ありますが、この問題は「天敵の研究」 と合わせて別のコーナーでもう少し詳しく説明したいと思います。
りんごの木の使い道は?
焚き木に使う以外これといった用途はありません。しかし、最近は暖炉や薪ストーブが静かなブームのようですが、剪定で落としたリンゴの幹や枝を薪に使うと良い香りがするということで人気があります。