果実について
摘蕾、摘花、摘果について教えて下さい!
モモを例にしてお話しましょう。 着果管理 (樹にどのくらいの数の果実をならせるか)は 摘蕾 (余分なつぼみをとること)と 摘花 (余分な花をとること)が基本と言われています。
モモの樹に葉が育ち光合成で作られた養分が利用されるようになるのは、花の満開後30日目以降になってからです。それまでは、前の年の収穫後から冬の休眠期にかけて樹に貯えられた貯蔵養分がエネルギー源になるのです。つまり新芽がでて若葉が育つのはこの貯蔵養分に頼っています。無駄な蕾をつけ無駄な花を咲かせることはこの貯蔵養分を浪費することになるのですね。花が一杯咲いたモモの樹は見かけは美しいのですが、モモの樹にとっては消耗に他ならないのです。貯蔵養分を有効に使い、美味しい実を育てるためにおこなう作業が摘蕾と摘花です。
最後に 摘果 です。着果量の調節はは摘蕾と摘花でおこなうのが基本ですが、最終調節をおこなうのが摘果です。わかりやすく言えば実の間引きですね。摘果は樹に勢い( 樹勢 )をみながら行います。摘果は 予備摘果 (満開後2~3週間でおこなう)、 本摘果 (満開後40日目頃におこなう)、 修正摘果 (満開後70日目以降におこなう)の3回にわけておこないます。予備摘果は最終着果量の50%くらいをめどにしておこないます。本摘果は樹勢を見てその程度を決めますが大体は最終着果量の10~20%増しが目安です。修正摘果は最後の仕上げで、形の悪いものや虫食いのもの、育ちが悪い実をとりのぞく作業です。
一本の樹にどれくらいの数のりんごや桃がなるの?
これは果樹園のある地域の気候や土壌、肥料のやり方、果樹の品種や樹齢、剪定や摘果のやり方など様々の要因によって異なりますので一概に言うことはできません。しかし、標準的な例をお話すれば、10アール(a)あたり24本の木を植えて、大体10000から12000個、つまり一本の樹で平均500個くらいの果実を収穫することができます。
しかし美味しい 「赤い実」 を安定して育てるためには、ただたくさん収穫すれば良いと言うものではありません。また果樹というのは大変微妙なもので、例えばリンゴではある年に無理してたくさん収穫したりすると実にばっかり栄養がいってしまい樹の成長に悪影響を受けて、翌年に実をつけなくなったり収量が激減したりしてしまうことがあるのです。これはリンゴの 隔年結果 (一年おきにしか実がならない)と呼ばれる現象です。果樹栽培で大切なことは毎年安定して美味しい実の収穫をあげることですから、無理して収量を上げるのではなく、樹の成長を促しつつ、恵みである果実をほどよい量だけならせることが大切なのです。
美味しい桃やりんごはどうやって見分けるの?
美味しいリンゴや桃の見分けかたも大事ですが、 「赤い実の味の良し悪し」 は、もちろん好みもありますが、なんと言っても品種により決まります。一般に 早稲種 は甘味に乏しく、美味しいものは 晩生 の種類に多いことは仕方ありませんね。 「赤い実の熟れる里」 のお奨めは? それは桃なら「あかつき」、リンゴなら「ふじ」、これは誰しも異存のないところでしょう。里の主力品種もこのふたつです。
美味しいリンゴの見分け方
まずは美味しいリンゴの見分けかたから。あまり難しく考えないで、 「手に持ってズッシリと重く感じるもの」 が良いのです。加えて、ツルが太いものが美味しいリンゴです。重さとツルの太さ、あと加えるなら形、色、つやが良いものがおすすめですね。
でもこれだけではちょっと愛想がないので、もう少し詳しく知りたい人のために説明しておきましょうか。リンゴの味を決める要素には
- 大きさと重さ
- ツルの太さ
- 色
- 香り
などがあります。
大きいリンゴは見かけは良いのですが必ずしも味はよくありません。中型からやや小型で、ズッシリと重く感じるものが良いのです。重いということは比重が高く糖度も高いことを示しています。
ツルは見た目にみずみずしくて太いものを撰びましょう。ツルが太いということは、それだけ樹の上で充分完熟させた証拠でもあります。
色も大事な要素です。一般には色の良くついたものほど甘みが強く味も濃いものです。但し袋をかけて栽培したりんごは、明るい色は付いているが、甘みが劣ることも多いのです。みかけにごまかされてはいけません。 「赤い実の熟れる里」 では 難着色種 といわれる「ふじ」を無袋で栽培し、樹上で完熟させています。これは着色は少々鈍いのですが、袋をかけたリンゴよりはるかに甘味が強く蜜もよく入るからです。
最後に香りですが、リンゴの香りの素は、アルコール類、エステル類などだと言われています。一般には、よく熟したものほど、リンゴ特有の良い香りを出します。但し、熟し過ぎて、発酵臭のように感じられるものは避けてください。
台風で落ちた実はどうするの?
残念ながら捨てるしかありません。一部では台風で落ちたリンゴをリンゴ酢の原料に使ったりもしているようですが、 「赤い実の熟れる里」 はよいものを消費者届けることをモットーにしていますから、躊躇なく捨てることにしています。またモモでは樹から落ちた実を放っておくと腐って 青酸物質 という根に対する毒物が発生して根の発育に悪影響を与えます。速やかに捨てなければなりません。
質問に答えるついでに、果樹栽培と台風や強風との戦いについて説明しておきましょう。とくに収穫までの期間がながいリンゴは台風などの強風による 落果 との戦いでもあります。対策としては枝の剪定を工夫して風に強い樹をつくる努力をしています。また、 摘果 といって間引きをするときに、できるだけ枝から下に向かってぶらさがった実を残すようにしています。風が吹いても左右に揺れて風をやり過ごさせるという工夫です。枝から上に向かってついている実は、風が吹くと「あそび」が少ないために簡単に落ちてしまうのです。
風の被害は落果だけではありません。何とか落果を防いでも、葉っぱで実がこすれて表面に擦り傷ができてしまい、売り物にならなくなってしまったりもします。剪定や摘果の工夫のほかにも防風ネットを張ったりもして、可能な限り落果を防いでいますが、正直に言ってこれという有効な手段はありません。何年かに一度は台風で殆どの実が落ちてしまうこともあり、果樹園農家の泣き所になっています。
なんで桃やりんごに袋をかぶせるの?
「赤い実の熟れる里」 では 無袋栽培 を基本にしています。もちろん 「黄金桃」 のように袋を掛けないとその持ち味の美しい色がでないような品種は別ですが、原則は無袋栽培です。その理由は袋をかけた果実は見かけは綺麗ですが、味はどうしても無袋栽培の実に劣るからなのです。皆さんには、みかけに騙されないで、ホンモノの味を知る消費者になってもらいたいと思います。
それはさておき、果実に袋を掛ける理由は、
- 病害虫の被害が防止でき薬剤散布の回数が少ない
- 表面の荒れを防ぎ、また果実の葉緑素が退化して着色が鮮明になり、外観が綺麗に仕上がる
- 裂果(実の成長に伴って果肉が割れてしまう現象)が起きやすい品種では、これを防ぐことができる
ことなどによります。但し、 有袋栽培 はこのようなメリットはありますが、果実の糖度は無袋栽培に劣りますので、味を追求する 「赤い実の熟れる里」 では一部の品種を除いてやっていません。
袋を掛ける時期は早いほどその効果が高いのですが、あまり早すぎると落果しやすいので注意が必要です。また確かに袋をかけると病害虫の浸入を防ぐことができますが、袋を掛ける前の消毒が不充分だと、却って害虫の繁殖を助けてしまいます。消費者におもねり過ぎて、みかけだけ良くするのも考えものですね。
りんごや桃の保存方法を教えて下さい!
果物でも野菜でも新鮮なのが一番、季節季節の新鮮なものを食べてください。とくにモモは非常にデリケートな果物ですから、正直に言ってこれという保存方法はありません。里から届いたらすぐ開封してできるだけ涼しいところで保管して下さい。どうしても、柔らかいのがお好きな方は常温で1日ぐらい置きますと柔らかくなります。モモは冷やしすぎると甘みが薄くなりますので、食べる1時間程前に冷蔵庫から出して食べてください。また、あまり冷やしすぎると甘味が落ちるので、冷蔵庫に入れるのは食べる2~3時間前くらいにしてください。
リンゴはモモと違って長期の保存が利く果物です。冬場であれば凍らない冷たい場所に置けば1ヶ月でも大丈夫です。でも、やはり味はすこしづつ落ちて行きますからなるべく早く食べるにこしたことはありません。 少数の時はビニール袋などに密封して冷蔵庫に入れておくのが良いでしょう。リンゴはエチレンガスを発生させます。一緒に置いてあるほかの果物の熟成を早め、痛んでしまうようなことがありますので、一緒にしないで別のビニール袋などに入れて保管してください。また、リンゴの皮をむいてしばらくすると変色してしまいますね。これはリンゴの皮の直下にあるポリフェノールという 抗酸化物質 が酸化されておこる現象です。この変色を防ぐためには、薄い塩水かレモン水につけておいてください。この詳細は「赤い実と抗酸化物質」 のコーナーを見てください。